ポッピンQ感想

突然ですが、私はポッピンQが大好きです。
12月3日に行われたSPMや試写会含め、既に9回程鑑賞しています。

私は、ポッピンQを面白いとは思いません。
よく見聞きするポッピンQに対する指摘・批評については概ねその通りだと思います。
初めて観たときは、同じことを感じ、同じことを考えました。
作品の出来で言えば、豊作と言われる2016年のアニメ映画の中でも下位を争うと思っています。

しかし、それでも、私はポッピンQが大好きです。

それぞれ悩みを持つ5人の15歳の女の子たち。
そんな子たちが、自分自身の悩みを乗り超えつつ困難に立ち向かっていく姿は、それだけで美しい。
お話として描写が不足していたり、感情の整合性が取れていなかったりといった指摘はごもっともです。私もそう思いました。
しかし、そういった描写されていない場面を妄想することは、オタクが持つ重要な、そして誇れるスキルの一つだとも思います。
ポッピンQを観る時は、一つのお話として捉えるのではなく、場面場面を切り取った思い出の動画として捉えるべきです。

本作のテーマは様々に捉えることができますが、あまり言及されていないこととしては、「”過去”のやり直しの否定」が挙げられると思います。


以下、ネタバレ。



謎の少年レノは、伊純に過去の失敗を「やり直す」ことを唆します。
また、本作のラスボスである黒沙紀は、過去を「やり直す」ことで永遠の今を手に入れようとします。
そして主人公である伊純は、そのどちらも否定し、過去を受け入れて未来へと踏み出します。

これは、昨今増えているループもの(やり直しの物語)への明確な否定と捉えることができます。
過去をやり直したいと思った経験は、誰しもが持っているかと思います。だからこそ、過去をやり直すお話が、万人に受け入れられているのかと思います。
しかし本作は、「あり得ない空想で立ち止まらず、勇気を出して前に進もう。」「誰だって、過去をやり直すことはできない。だからこそ、過去の自分を受け入れて、未来に向かって頑張るしかないんだ。」といったメッセージを発することで、そういった全ての人を前向きに励ましてくれる作品だと考えています。

終盤で、伊純の同位体であるポコンが「苦しんで、悩んで、がむしゃらに頑張ってきたから今のお前がある」という台詞があります。
とてもストレートな言葉で、まさにこの作品を表す台詞だと感じています。
過去を過去として受け入れること。そこから未来を変えていける。そういったポジティブなメッセージが溢れています。

私がポッピンQのことを大好きな理由はこれだけではないのですが、好きな理由の一つとして書きました。
作品として声を大にしておすすめすることはできませんが、今まで何かをがむしゃらに頑張ってきた人にとってはじんわり励まされる、そんな作品だと思います。

どうか観てみてはいかがでしょうか。